モンテッソーリ教育とは何か?家庭で簡単にできるやり方もプロが解説!

「モンテッソーリ教育」を知っていますか?

モンテッソーリ教育とは、子どもを観察することで子どもが興味や関心を持っていることを見つけ、自分自身で育つ力をサポートする教育法です。

子どもが繰り返しやっていることや、興味を示していることを見つけるために、まずは子どもをしっかりと見ることが大切であると言われています。

子どもは興味を持つことで集中してものごとに取り組むことができます。何度も繰り返し行うことで、うまくできたときには「自分でできた」という達成感を感じることにつながります。

子ども一人ひとりの発達段階を知ることで、その成長を手助けするメソッドがモンテッソーリ教育です。

モンテッソーリ教育を理解すれば、大人にとっては時に意味が分からないと感じられる子どもの行動にどんな意味があるのかが分かるようになります

この記事ではモンテッソーリ教育について誰にでも分かりやすく解説します。

モンテッソーリの子どもの見方やサポート方法を知ることで、子育てのヒントが見つかるはずです。

この記事は保育士・介護福祉士の資格を保有するhiiが担当。約10年に渡って認可保育所、児童発達支援施設等に勤務し乳幼児の保育・療育に携わる。現在は特別支援学校に勤務する傍ら、ライターとして子育て・保育などに関する記事執筆を行っている。

モンテッソーリ教育とは何か?簡単にいうと?

モンテッソーリ教育は、1907年にイタリアでマリア・モンテッソーリが「子どもの家」という施設を作ったのがはじまりと言われています。

マリア・モンテッソーリはイタリア初の女性医師で、医学や生物学、心理学などの考え方をもとにモンテッソーリ教育を提唱しました。

「子どもはすべてのことができるように生まれてくるのです。もし、できないことがあるとすれば、物理的に不可能な環境にあるか、どうすればいいのかやり方がわからないだけなのです」

これはマリア・モンテッソーリの言葉です。当時、子どもは何もできない存在と考えられていました。それに対して、彼女は環境が整えられ、やり方が分かれば子どもは何でも自分でできるはずだと主張したのです。

今から100年以上も前の教育法ですが、モンテッソーリ教育は今でも世界中で支持されています。

それはモンテッソーリ教育が子どもの成長発達のプロセスに基づいた教育法であるためです。

子どもの成長発達のプロセスは、いつの時代も、場所がどこであっても変わらないものです。そのため、時代や国にかかわらず、世界中で共通した方法で行うことができるのです。

モンテッソーリ教育の特徴は?

モンテッソーリ教育の大きな特徴は、最初にもお伝えしたように子どもを観察することから生まれた教育法であるということです。

この教育法は、子どもには自分で自分を育てる力があるという考え方に基づいています。

まずは子どもをよく観察し、繰り返しやっていることや興味を示していることを見つけましょう。

子どもが「何に困っているのか?」「どのように手助けすればできるようになるか?」を考えながら、子どもの姿をじっくりと見ることが大切です。

モンテッソーリ教育では、子どもに動作などを教えたいときには、まずは大人がやってみせることが一番と言われています。

子どもは周囲の人の行動をとてもよく見ています。

一つひとつの動きを丁寧にゆっくりと教えれば、子どもは大人や周囲の子どもたちの姿を見て学ぶことができます。

「仕事」という考え方

モンテッソーリ教育において、子どもの活動は「仕事」と呼ばれています。

子どもは遊びを通して自分という人間を形成する「仕事」をしているというモンテッソーリの考え方から名付けられました。

これは子どもが持っている、自分自身で成長する力を尊重しているからこその表現と言えます。

通常のおもちゃを使った遊びなどとは区別するために、この「仕事」という言葉を使っています。

子どもの発達の四段階

子どもが成長過程のどの段階にいるのかを知るために、モンテッソーリが考え出したのが「子どもの発達の四段階」です。

モンテッソーリは、0歳から24歳頃までの期間を、6年ごとに分けました。

0〜6歳乳幼児期
6〜12歳児童期
12〜18歳思春期
18〜24歳青年期

子どもが今、この四段階のどこにいるのかを知ることが大切です。

乳幼児期は、成長発達において特に大切な期間とされています。

最も大きく成長・変化する時期で、その後の人生において必要な力の80%がこの時期に身に付きます。

敏感期

子どもには何かに興味を持ち、集中して同じことを何度も繰り返す時期があります。これは、特定のものごとを吸収し習得する時期で、「敏感期」と呼ばれています。

敏感期は、子どもの発達の四段階の「乳幼児期」にあたる時期だけに現れ、やがて消えていきます。

例えば子どもがティッシュを箱から次々と出してしまったり、ビンのふたを全部開けてしまったり、そんな「イタズラ」に困ったことはないでしょうか。

大人にとっては困ってしまうこれらの行動は、実は敏感期のあらわれなのです。

例に挙げたような行動は「運動の敏感期」で、興味を持つ動きは月齢によって変化していきます。

ティッシュを出す行為は「引っ張る」動作の習得、ビンのふたを開ける行為は「ひねる」動作の習得という目的があります。

この時期に子どもが夢中になってやっている遊びを取り上げてしまうと、子どもはその動作を習得する大切な機会を逃してしまうことになります。

大人は子どもの行為を邪魔することなく見守ってあげることが大切です。

もちろんなんでもかんでも自由にやらせるということではなく、「どうしたらこの遊びを思う存分やらせてあげられるか?」と考えてみてほしいのです。

敏感期には「運動の敏感期」、「秩序の敏感期」、「言語の敏感期」など、たくさんの種類があります。

教具を使用する

モンテッソーリ教育では、子どもの発達を促すために使う教材を教具と呼びます。

教具は一つひとつが特定の目的を持っており、下記で解説する5つの分野に沿って作られたものです。

モンテッソーリ教育内容の5つの分野

モンテッソーリ教育には、それぞれの月齢によって現れる「敏感期」に対応した教育内容の5つの分野があります。

それぞれの分野の内容について、簡単に解説します。

①日常生活

1〜2歳は「運動の敏感期」と言われています。

この時期の子どもは、日常生活の練習を通して自分の体を意志どおりにコントロールする力を身につけます。

身の回りのことが自分でできるようになると、子どもは自信が持てるようになり自立への第一歩となります。

②感覚

3~6歳は「感覚の敏感期」と言われています。

感覚器官が発達してくる時期で、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚などの感受性が敏感になります。

そのため五感を使った遊びを通して外界からのさまざまな刺激を受け取ることが大切になります。

③言語

「言語の敏感期」は最初にはじまる敏感期で、胎生7ヶ月〜5歳半くらいに現れます。

子どもはこの時期にことばを習得していきます。

最初に習得するのは母国語ですが、この時期はどんな国の言葉でも習得すると言われています。

言語能力を習得する過程で、「話す」「書く」「読む」などの力を身につけていきます。

④算数

4〜6歳は「数の敏感期」で、物の大きさ、量、順序など日常生活の数的な要素に敏感になる時期です。

モンテッソーリ教育では算数教具を使い、「数」を感覚的なものから具体的なものとして捉えられるように促していきます。

⑤文化教育

文化教育では、ことばと数以外のさまざまな分野の能力を育みます。

具体的には動植物、地理、地学、歴史、道徳などの理科や社会に相当する内容や、音楽、美術、体育なども含みます。

子どもの興味に合った内容を提供することが大切です。

日本におけるモンテッソーリ教育

モンテッソーリ教育のメソッドに興味を持ち、子どもに体験してもらいたいと思った場合、どうすれば良いでしょうか。

日本ではモンテッソーリ教育は幼児教育を中心に導入されています。

アメリカではモンテッソーリ教育施設「子どもの家」が3,000ヶ所あると言われていますが、日本で実践されている保育園・幼稚園はあまり多くはありません。

そのため、住んでいる地域に必ずしもそのような園があるとは限らないのが現状です。

ただ、カリキュラムの一つとしてモンテッソーリ教育を取り入れている保育園・幼稚園もあるため、よくリサーチすることが大切です。

また、モンテッソーリ教育は家庭でも行うことができます。教師の資格がなくても、本物の教具がなくても、モンテッソーリ教育の知識を持っていれば子どもの発達に合った環境設定をすることが可能です。

家庭でできる具体的なモンテッソーリ教育の実践方法とは?

ここでは乳幼児期、主に0〜3歳の子どもに対する具体的な実践方法について解説します。

  • 口や手を出さずに、子どもを観察しながら見守る時間を作る

子どもが何に興味を持ち、何を繰り返し行なっているのかを知ることで、成長に合った遊びを提供することができます。一時間でも良いので、時々は子どもをそっと見守る時間を作れると良いですね。

  • 子どもが集中しているときは邪魔をしない

子どもが遊んでいるとつい一緒に遊んであげたくなったり、「こっちもやってごらん」と違う遊びに誘ったりしたくなるかもしれません。しかし、子どもが集中して遊んでいるときは脳が活性化しているときです。声をかけるなどして中断せずに、じっくりとその遊びをさせてあげましょう。

  • 子ども自身に選んでもらう

「どっちにする?」の二択から、遊ぶおもちゃなどを子どもに選んでもらいます。また、手の届く高さの棚におもちゃを少しだけ置き、子どもが自分で選べる環境にしておくことも大切です。

  • 0〜3歳(秩序の敏感期)には「いつもと同じ」を意識する

授乳する場所、オムツ交換する場所、寝る場所などを決めておくと良いでしょう。「いつもと同じ」と感じられる環境は子どもに安心感を与えます。

  • 「トッポンチーノ」を用意する

トッポンチーノはモンテッソーリ教育を元に作られた布団のようなものです。新生児のときに準備しておき、この上に乗せてそのまま抱っこすると首が座っていない赤ちゃんでも姿勢が安定します。また、抱っこから降ろしたときにも背中の感覚などが変わらないので、「せっかく寝ても布団に降ろすときに泣いてしまう」ということが起こりにくくなります。

  • 「0歳児の棚」を用意する

モンテッソーリ教育では「棚」の存在がとても重要です。ハイハイをしている子どもがつかまり立ちをするのにちょうど良い高さの安全な棚を用意しましょう。子どもの目線が集中するところにおもちゃを並べて置くこともできます。

  • 手作り教具で遊ぶ

乳幼児期の教具はお家で手作りすることができます。教具は成長を手助けするためのものです。教具の特徴は目的が一つに決められていることであるため、「落とす」「入れる」など行う動作は一つに絞りましょう。子どもの興味をひくもので、一目で目的がわかる単純なものであることが大切です。

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おわりに:日常生活にモンテッソーリ教育を取り入れてみよう

モンテッソーリ教育は専門家によって行われていたり、決まった教具が使われていたりというイメージが強いかもしれません。

しかし、その考え方やアプローチ法を知ることで、お家でもモンテッソーリ教育に基いた子育てをすることは十分可能です。

モンテッソーリ教育は胎児期からの連続した教育法なので、お家で行われることでより長期的な視点で子どもの発達を支えることができるでしょう。

子どもにとって良い影響を与えることはもちろん、このメソッドを知ることでお母さんやお父さんも子どもの行動の意味を知り、適切なお手伝いができるようになります。

子どもが分かれば育児が少しでも楽になり、子どもに寄り添った楽しい子育てになるかもしれません。

ぜひ日常生活にモンテッソーリ教育の考え方を取り入れてみてくださいね。

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